(作品紹介)
海辺の町。
風が吹き、波が寄せては返す。
変わり続ける景色の中で、変わらず残り続けるものがある。
誰にも渡せなかった言葉。
謝れなかった記憶。
会えなかったのか、会わなかったのか――その答えの出ない問い。
本作は、いわゆる物語に出てくるような人物は一切登場しない映像作品である。
画面に映るのは、海、空、道、草木、岸壁、そして時間だけ。
語られるのは、ある「あなた」に宛てられた手紙の断片。
それは誰かを失った者の告白にも聞こえ、誰かを傷つけた者の懺悔にも聞こえる。
しかし、その関係も、その出来事も、明確には語られない。
あなたは風景を見つめながら、自らの記憶や後悔を重ね合わせていく。
赦しを求める物語ではない。
忘れるための物語でもない。
言えなかった言葉とともに生きること。
消えない不在を抱えながら、それでも歩き続けること。
静かな海辺を舞台に描かれる、喪失と記憶についての映像詩。
語られなかった想いが、波の音とともに観る者の心へ静かに届く。
A Film By Omiro Itakura.