深夜の道路を走る車の中、カーラジオからは未来の自分の声が聞こえる。
「随分、暗くなったな」
と、そいつは言う。その声は、静寂を破るように響き渡る。後部座席の窓から外を見ると、闇がすべてを覆っている。
「闇だらけだ。世の中は」
そいつの言葉が続く。その言葉に、運転席の男は反応しない。彼はただ、真っすぐ前を見つめている。しかし、その目は焦点が合っておらず、ただただ遠くを見つめているようだ。カーラジオにノイズが走る。
「なあ、お前もそう思うだろ?」
男に問いかける。しかし、男は依然として無言で、何かを考え込んでいるようだ。彼の心の中には、闇と同じくらいの深い沈黙が広がっている。
A Film By Omiro Itakura